エリック・ドルフィー

好きなジャズ・ミュージシャンはたくさんいるけど、その中でも特に好きなのが エリック・ドルフィーという人。
エリック・ドルフィーはマルチ・リード・プレーヤーで、アルト・サックスのほかにバス・クラリネットやフルートも演奏します。
今でこそバス・クラリネットを演奏するジャズ・プレーヤーはたくさんいますが、僕が知る限りでは、クラシックの楽器であるバス・クラリネットを
ジャズの主要楽器として用いたのは、エリック・ドルフィーが最初ではないかと思います。
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エリック・ドルフィーを初めて聴いたのは高校生の頃で、FMから流れた「Number Eight」でした。
はじめ、「何だろう、この音楽は!」と 呆気にとられましたが、カミソリのように鋭い切れ味のアルト・サックスのソロにとても魅かれました。
その演奏が忘れられず、レコードを買いました。
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このレコードは、エリック・ドルフィーと トランペットのブッカー・リトルの双頭のクインテットの演奏で、リズム・セクションは、マル・ウォルドロン(p)、
リチャード・デイヴィス(b)、エド・ブラックウェル(ds)。1961年7月16日、ニューヨーク、ファイヴ・スポットでのライブを収録したものです。
曲目は、A面「Number Eight」、B面「Booker's Waltz」の2曲だけですが、十分に濃い内容のレコードです。
このレコード、何度聴いたことかわかりませんが、このライブでメンバー5人とも鬼気迫るようなものすごく充実した演奏をしています。
あとからいろんなことを知りましたが、このメンバーで演奏したのは ほんの短い間でした。クインテットを組んだその年の10月にブッカー・リトルが
急逝したからです。23歳という若さで。 その3年後、エリック・ドルフィーも36歳で亡くなりました。
2人の天才を擁した双頭クインテットの活動期間がそんなに短かったのは本当に残念ですが、このファイヴ・スポットでのこの日のライブ演奏は
PRESTIGE レコードにより記録され、3枚のLPになって残りました。
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ブッカー・リトルも、その若さが信じられないくらいとてもうまくて優れたトランペッターです。クリフォード・ブラウンを彷彿させます。
エリック・ドルフィーも基本はチャーリー・パーカーでしょうが、思いっ切り自由でハジケテいます。でも彼のジャズはフリーフォームジャズでは
ありません。ビーバップのスタイルにきっちり納まりながら、どこまでも自由です。決まった枠の中で自由にやる。
枠の大きさと その中でやれることの自由度とは比例しない。決まりごとがあると自由にはできないということではない。
クラシックでは、演奏家は皆同じ楽譜で演奏したとしても、同じ演奏はない。作曲家は、ソナタ形式という決まりごとの中でもどこまでも自由を膨らませられる。

この奇跡のようなコンボが、ブッカー・リトルの死で わずか数ヶ月しか活動できなかったとは・・・。
「Number Eight」の演奏中、ベース・ソロの途中でかすかに電話のベルの音が聞こえます。(レコードでは聞こえたのだけど、CDや Youtube では
よく聞こえませんが。) 1961年7月16日のこの演奏の最中に ファイヴ・スポットに電話をかけた人がいたんだなあ。友だちが来ていないか聞いたのか、
または、「もうエリックの演奏は始まったかい?」「今まさにやってるよ」と、受話器をステージに向けた とか、いろいろ想像したものでした。

          「Number Eight」 → https://youtu.be/u0EL5d59u_4
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エリック・ドルフィーが実際に演奏をする映像を見たのは、Youtube が初めてです。ジョン・コルトレーンのクヮルテットに加わって「Impressions」を演奏
していました。コルトレーンのソロに続いてソロをとったドルフィーは、画面がくすんでいたせいもあるかもしれませんが、地中から這い出してきた悪魔が
いともたやすく この曲に強烈なスパイスを加えたように見えました。

                    

エリック・ドルフィーの演奏は、フルートも良いのですが、バス・クラリネットでのプレイがたまらなく好きです。

                    

エリック・ドルフィーのスタイルを真似てみようとしたミュージシャンはたくさんいたそうですが、エリック・ドルフィーのようにやれたという話は聞いたことがありません。
形は全然違いますが、モーツァルトみたいです。   「いかにも美しく、親しみやすく、誰でもまねしたがるが、一人として成功しなかった。
幾時か誰かが成功するかもしれぬというようなことさえ考えられぬ。元来がそういう仕組みにできあがっている音楽だからだ。はっきり言ってしまえば、
人間どもをからかうために、悪魔が発明した音楽だ。」(エッケルマン、「ゲエテとの対話」 1829年)

死の3週間前に録音されたアルバム、「LAST DATE」。もともと放送のための録音で、レコード化の予定はなかったそうですが、ラスト・アルバムとして
発売されました。  エリック・ドルフィーにしろブッカー・リトルにしろ、あまりにも短い人生ですが、その短い間に、強烈で偉大な伝説をつくりました。

          「LAST DATE」 より 「Epistrophy」 → https://youtu.be/XUvz0FJzB_s
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by muuta2005 | 2015-10-18 13:47 | 音楽
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