「キャットフードなんてほんとうのたべものじゃねえ! ほんとうのたべものとは、スズメやネズミやお魚のことだ。」と猫たちが言っていたという話ではありません。 宮沢賢治の言う「ほんとうのたべもの」のことです。 ずっと以前、WO の時も一度取り上げた 童話集 『注文の多い料理店』 のこの序文、これまで何度読み返したかわかりませんが、読むたびに自分の心もきれいになって行く感じさえします。 まさにこの序文そのものも「ほんとうのたべもの」なのだと思います。 吉田秀和が、ドヴォルザークの交響曲第8番について ↓ このように書いています。 「どこをとってみても、真実の感情があふれるようにみなぎっている音楽の流れ。けばけばしさのない、ほんとうの輝き。 どの旋律も、まるで自然の中から、両手で汲みあげてきて、そのまま、そっと五線紙の上に写しおいたかのようなみずみずしさにみちているすばらしさ。」 この文を読むと、宮沢賢治の序文を思い出します。 そして、ジョージ・セルの生涯最後に録音したレコードがこのドヴォルザークの交響曲第8番だったことを思い出します。 「49円の宝物」 の記事でも書きましたが、セルは 1970年の最初で最後の日本公演から帰国した直後に亡くなりました。癌を患っていて、来日した時にはもう随分進行していたようです。 もちろんセル自身自覚していて、セルと同じく完璧主義者のピエール・ブーレーズを副指揮者として同行させたのは、公演途中で自分にもしものことがあった場合に備えたのではないかと言われています。 そしてその日本公演は驚異的な充実した演奏と 伝説にもなっています。 セルは、来日1ヵ月前の 1970年 4月に2つの交響曲をレコーディングしています。それらがセルにとって生涯最後のレコードになりました。 最後にレコーディングしたのは、ドヴォルザークの交響曲第8番と、シューベルトの交響曲第9番。この時セルは、これが最後のレコーディングになるかもしれないということは考えていたと思います。 セルはとてもレパートリーの広い指揮者で、あらゆる作曲家の作品をレコードとして残していて、その多くは名盤と呼ばれるものになっています。その中でこの2曲を再び選んだということがとても印象的でした。 セルの魂は最後にボヘミアの大地に戻り、そこから天国へ上って行ったのかなと勝手に想像したりしました。 この2つの交響曲のレコードも、本当に素晴らしい演奏で、この2曲の最も優れた演奏と評価する人も多いです。 1970年 5月のジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団の日本公演は、東京文化会館でのコンサートが後にライブ盤として発売されました。とても臨場感のある良い音で残っています。 東京文化会館は、残響の少ないホールのようですが、それがかえってオーケストラそのものの音が伝わってくる感じで、生々しいです。 ステレオで聴くと、セルの真後ろの10列目くらいで聴いている感じで、生きたセルの息づかいや体温まで伝わってくるようです。 そしてその前年、1969年のルツェルン音楽祭でセルがチェコ・フィルを振って演奏した ドヴォルザークの交響曲第8番のライブ盤が昨年発売されました。 こちらもホールの響きは押さえられた生々しい音で、とても良い録音です。そしてその演奏は、上に書いた最後のレコーディングの8番に勝るとも劣らない名演です。 Youtube で、東京での シベリウスの交響曲第2番と、ルツェルン音楽祭での ドヴォルザークの交響曲第8番が聴けるようになっていたのでリンクしておきます。 これらのCDは、僕のコレクションの中でも特に重要なものになっています。 このセルの音楽を聴くと、僕の心の中の醜い部分がだんだん浄化され、心が透明になっていく感じさえします。そして、生きる力、力強さをもらえるような気がします。 宮沢賢治の言う「ほんとうのたべもの」とは こういうものではないかと思います。 そういう意味では、猫たちも僕の「ほんとうのたべもの」かもしれません。猫を食べるわけではありませんが。(^^; 心の栄養、ビタミン剤みたいなもの。 【 追 記 】 ここまで書いて、このまえの49円のセルのモーツァルトのCDを聴きながら ふと解説を見たら、吉田秀和がセルについて書いた文が出て来たので、下に貼ります。
by muuta2005
| 2014-06-25 23:43
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